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目次
人には、他人の行動については他人の内面に原因があると考えるのに対して、自分の行動については、原因が自分の外側にあると考える傾向があります。このような心理傾向のことを、行為者観察者バイアスと言います。言い換えると、他人のミスは性格や能力のせい、自分のミスは周りの環境のせいと考えてしまう心理のことです。 なお、他人の行動について、他人の内面に原因があると考えるのは、対応バイアスの項で詳しく解説しておりますので、そちらも併せてご参照ください。 行為者観察者バイアスの、具体的な例について見ていきましょう。 ①遅刻 自分が遅刻した時は、電車の遅延や道路の混雑など、状況的な要因を挙げがちです。しかし、他人が遅刻した時は、「時間にルーズな人だ」と性格に原因を求めてしまうことがあります。 ②仕事の失敗 自分が仕事でミスをした時は、情報不足や時間的制約など、外的要因を理由にすることが多いです。しかし、他人が同じミスをした時は、「能力が低い」「注意力がない」など、その人の内面に原因を求めてしまうことがあります。 ③試験の結果 自分の試験の点数が低かった場合は、「試験問題が難しかった」「体調が悪かった」などと、状況を要因として捉えてしまいがちです。しかし、他人の試験の点数が低かった場合は、「あの人は勉強が足りない」「努力不足だ」と、その人の努力不足を要因として捉えることがあります。 ④プレゼンテーション 自分がプレゼンで上手くいかなかった時は、「準備時間が足りなかった」「会場の雰囲気が悪かった」など、環境や状況のせいにしがちです。しかし、他人のプレゼンがうまくいかなかった時、「緊張に弱い」「説明が下手」など、その人の能力や性格に原因を求めてしまうことがあります。 これらの例からもわかるように、行為者観察者バイアスは、自分と他人に対する評価の差を生み出し、誤解や偏見に繋がる可能性があります。
なぜ人は、他人の行動は内面に原因があると考えるのに、自分の行動は外側に原因があると考えるのか、その要因について考察していきましょう。 行為者観察者バイアスの発生要因としては、以下のようなことが考えられます。 ①情報量の差 人は誰しも、自分の内面的な状態や外部の状況の事は、自分の事なので、よく知っています。一方、他人の内面的な状態や外部の状況の事は、知っていることが極めて限定的です。他人について知っている情報が極めて限定的なため、他人の内面的な状態や外部の状況のことを十分に考慮できず、その人の内面に原因があると考えやすくなるのです。 ②焦点の違い 人は、自分が行為者の場合は、周囲の状況や環境に注意が向きやすくなります。一方で、他者が行為者の場合は、行動している人物に注意が向きやすくなります。このように、人の注意の焦点(≒視線)の違いは、行為者観察者バイアスを発生させやすくしていると言えます。 ③自己肯定感の維持 自分の行動について、原因が自分の外側にあると考えるのは、自己肯定感を守るための防衛機制が働いたと考えることが出来ます。防衛機制とは、自分にとって不都合な状況や受け入れがたい感情、ストレスに直面したときに、無意識に働く心の働きのことです。これは、不安や苦痛を軽減し、心を守るためのメカニズムと言えます。自分の行動について、原因が自分の外側にあると考えるのは、防衛機制における、「合理化」という言葉で説明することが出来ます。合理化とは、受け入れ難い出来事や満たされない欲求に対して、もっともらしい理由や説明を加えて、自己を正当化し、納得させようとすることです。 ④認知資源の節約 人間の脳は、限られたリソースで多くの情報を処理しなければならないため、情報処理のコストを最小限に抑える傾向があります。他人の行動の原因を内部要因に帰属することは、複雑な情報処理を回避し、認知資源を無認識のうちに節約していると言えます。
行為者観察者バイアスには、以下のようなデメリットがあるため、注意が必要です。 ①自己成長の阻害 行為者観察者バイアスに陥ると、失敗の原因を外的要因に帰属させてしまうため、反省や改善の機会を逃し、成長を阻害してしまいます。結果的に、スキルアップや成長の機会を逃してしまう可能性があります。 ②対人関係の悪化 他者の行動を性格や能力のせいにすることで、誤解や偏見を生みやすくなります。その結果、相手への共感や理解を妨げ、対人関係が悪化する可能性があります。 ③不公平な評価 他者を評価する際、その人の置かれている状況を考慮せず、能力や性格だけで判断してしまう可能性があります。特に、人事評価や採用活動などにおいて、客観性を欠いた判断をしてしまう可能性があります。 ④組織における問題 組織において、このバイアスが蔓延すると、責任の所在が曖昧になり、問題解決が遅れてしまう可能性があります。また、チームワークを阻害し、生産性の低下に繋がる可能性があります。 ⑤学習機会の喪失 本来、他者の行動の失敗は、自分自身への教訓や戒めになるものです。しかし、他者の失敗を内的要因に帰属させることで、他者の行動から学ぶ機会を逃してしまう可能性があります。
行為者観察者バイアスに陥ると、対人関係の悪化や自己成長の阻害など、様々なデメリットがあるため、対策を考えることが大切です。以下に、行為者観察者バイアスの対策方法について説明します。 ①自分自身の行動を客観的に見る 自分の行動の原因を外部に帰属させるのではなく、自己の内面に問題がなかったかどうかを客観的に分析し、反省する姿勢が大切です。そうすることで、次回以降の戒めになり、自己成長にも繋がります。 ②他人の状況や視点を考慮する 他者の行動には、自分の目には見えない状況や環境が大きく関わっています。そのため、他人の行動の原因を評価する際に、他者の内面に帰属させるのではなく、他人の状況や視点を考慮する努力を怠らないようにしましょう。他者の視点に立って行動を振り返ることで、安易に他者の行動の原因内面に帰属させることはなくなります。 ③メタ認知能力を高める メタ認知とは、自分が認知していることを客観的に把握し、制御することです。言い換えると、認知していることを認知することです。メタ認知の能力を向上させることにより、自身が行為者観察者バイアスに陥っていることに気付くことが出来ると、その影響を大きく低減することが出来ます。なお、メタ認知能力を高める方法の一つとして、セルフモニタリングと呼ばれる、自分の心や体の状態、行動、考え、感情などを観察して記録するという方法があります。 ④第三者からのフィードバックをもらう 自分自身の行動について、第三者からのフィードバックを受け入れることは、自分の行動の客観的な評価に役立ちます。また、第三者から自分の行動がどのように見えているのかを把握することで、自己成長にも繋がります。 ⑤質問を活用する 他者の行動の原因について、他者に直接質問することは、他者の行動の原因を理解することを促進します。質問をすることで、他者の視点を理解し、誤解を解消するのに役立ちます。また、自分自身が行為者観察者バイアスに陥っていたことに気付くことにも繋がり、自己成長へとつながります。 上記のような対策方法を取ることにより、行為者観察者バイアスによる影響を抑え、より豊かな人間関係を構築していくことが出来ます。
当Webサイトでは、行為者観察者バイアスの他にも、様々な認知バイアスを解説しております。 その他の認知バイアスは、以下をご参照ください。 ・ハロー効果とは ・確証バイアスとは ・計画錯誤とは ・正常性バイアスとは ・バラ色の回顧とは ・透明性の錯覚とは ・アンカリング効果とは ・知識の呪いとは ・後知恵バイアスとは ・権威バイアスとは ・対応バイアスとは ・現在バイアスとは ・サンクコストバイアスとは