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目次
人には、成功(≒生存)した人や企業の経験や体験を基準に判断し、その他多くの失敗事例が見えなくなることがあります。このような心理傾向のことを、生存バイアスと言います。結果として、物事を実際よりも楽観的に捉えたり、成功するための要因を誤解したりしてしまうことに繋がります。 生存バイアスの、具体的な例について、見ていきましょう。 ①帰還した戦闘機 生存バイアスの例として最も有名なのは、帰還した戦闘機の例です。第二次世界大戦において、損傷した戦闘機が自国へと帰還しました。そこで軍部は、帰還した戦闘機の損傷箇所を調べ、激しく損傷している部分を補強するように命じました。しかし、データとして考慮しているのは生存し、帰還した戦闘機のみで、帰還できなかった戦闘機は考慮されていません。帰還した戦闘機は、機体を損傷してもなお無事だったため、墜落せずに帰還できたのです。本当に補強すべきは、被弾していても帰還できた箇所ではなく、被弾すると帰還できない箇所であり、そこが最も強化すべき箇所です。 ②成功者へのインタビュー 成功者へのインタビュー記事や書籍では、成功に至るまでの道のりや秘訣が語られます。しかし、同じように努力したにもかかわらず成功しなかった人たちの情報はほとんどありません。そのため、成功者の行動を真似すれば自分も成功できると思い込んでしまう可能性があります。本当に自分が成功者になりたい場合は、成功者の情報だけでなく、失敗した人たちの情報もたくさん集めた上で、失敗事例からも多くの学びを得ることが重要です。 ③投資信託の運用成績 投資信託の過去のパフォーマンスを見ると、高いリターンを上げているものも多く存在します。しかし、運用成績の悪いファンドは途中で償還され、データから消えてしまうことがあります。そのため、残っているファンドだけを見ると、実際よりも投資信託のリターンが良く見えてしまうことがあります。 ④人気YouTuber 人気YouTuberの動画を見て、YouTubeでお金を稼ぐことは簡単だと考えてしまうことがあります。しかし、長年You Tuberをしていても十分に収益を挙げられていない人も多数います。
なぜ生存バイアスが発生するのか、その要因について見ていきましょう。 ①目に見える情報の偏り 生存バイアスの最も大きな原因は、私たちが、生存者の情報に偏って触れていることにあります。 ・成功者の声は大きく、失敗者の声は小さい 成功者は注目されやすく、メディアで取り上げられたり、講演会で語ったりする機会が多いです。一方、失敗者は表に出にくく、その経験は埋もれてしまいがちです。 ・過去のデータが完全ではない また、 企業の倒産や投資の失敗など、過去のデータは全て残っているわけではありません。成功した事例ばかりが目立ち、失敗事例は忘れ去られる傾向があります。 ②人間心理の影響 生存バイアスは、人間の心理特性とも深く関わっています。 ・成功への憧れ 人は成功者に憧れ、成功者の行動を模倣しようとする傾向があります。成功者のストーリーは魅力的ですが、それが必ずしも普遍的な成功法則ではないことを忘れてはいけません。 ・安心感の獲得 人は不安を解消するために、成功者の事例にすがろうとする場合があります。成功者の話を聞くことで、自分も成功できるという安心感を得ようとする心理が働くのです。 ③データ解釈の誤り データの解釈を誤ることも、生存バイアスにつながります。 ・相関関係と因果関係の混同 成功者のある共通点を見つけ、「これが成功の秘訣だ」と結論づけてしまうことがあります。しかし、それが本当に成功の原因なのか、単なる相関関係に過ぎないのかは慎重に判断する必要があります。 ・選択バイアス 特定の条件を満たしたデータだけを分析対象にすることで、偏った結果が出てしまうことがあります。すなわち、アンケートの母集団が成功者や生存者ばかりに偏っていると、生存バイアスの発生要因となります。
生存バイアスには、以下のようなデメリットがあるため、注意が必要です。 ①意思決定の質の低下 生存バイアスによって、物事の実態を正確に把握できなくなり、誤った判断をしてしまう可能性が高まります。 ・リスクの過小評価 失敗例が見えないため、実際よりもリスクが低いと錯覚し、過度に楽観的な見通しを立ててしまうことがあります。例えば、起業の成功事例ばかりを見て、失敗する可能性を軽視して安易に起業してしまうことなどが挙げられます。 ・効果の過大評価 生き残ったデータのみを分析することで、実際よりも効果や影響を大きく見積もってしまうことがあります。例えば、ある治療法を受けた患者のうち、生存者のみを対象に調査を行い、その治療法の効果を過大評価してしまうことなどが挙げられます。 ②機会損失 生存バイアスにとらわれることで、視野が狭くなり、新たな可能性を見逃してしまう可能性があります。 ・挑戦への躊躇 失敗例が見えないことで、必要以上にリスクを感じてしまい、新たな挑戦を躊躇してしまうことがあります。例えば、芸術家の成功談ばかり見ていると、才能がないと成功できないと思い込み、自分の才能を試すことを諦めてしまうかもしれません。 ・選択肢の狭まり 成功例だけに目を向けることで、視野が狭くなり、他の選択肢を見逃してしまう可能性があります。例えば、有名大学出身者が出世しやすいという情報ばかりに影響されると、他の大学に進学することや、大学以外の道を選ぶことの魅力に気づけないかもしれません。 ③社会的な格差や不平等の正当化 生存バイアスは、社会的な格差や不平等を正当化するような考え方につながる可能性があります。 ・努力の軽視 成功者の努力や才能を過大評価し、そうでない人々の努力を軽視してしまうことがあります。 ・自己責任論の強化 成功は個人の能力や努力の結果であると強調することで、社会構造や環境による影響を軽視してしまうことがあります。例えば、経済的に貧しい人は、本人の努力が足りないからだと考えてしまうことがあります。
生存バイアスに陥ってしまうと、誤った思考や行動を取ってしまう可能性があるため、対策を考えることが重要です。以下に、生存バイアスの対策方法を述べます。 ①見えないものを意識する。 生存バイアスは、成功例や目に見える情報ばかりに注目してしまうことで起こります。そのため、見えないものを意識することが重要です。 ・意識的に失敗例を探す 成功事例だけでなく、失敗例や、途中で脱落した事例にも目を向けましょう。例えば、起業家の成功談だけでなく、失敗談や、起業を断念した人の話も聞くことにより、多様な角度から物事を判断することが出来ます。 ・暗黙のデータを考える データから除外されたり、注目されない情報がないか、意識的に探してみましょう。例えば、アンケート調査で回答しなかった人の属性や意見を考えることなどが挙げられます。 ②多様な情報源に触れる 一つの情報源や限られた意見に頼るのではなく、多様な情報源から情報を収集することが大切です。 ・異なる立場からの意見を聞く 賛成意見だけではなく、反対意見や批判意見にも目を向けることが大切です。例えば、起業や投資などについて、積極的にするべきだという意見だけではなく、慎重派の意見にも耳を傾けることが重要です。 ・一次情報に触れる まとめサイトやニュース記事だけでなく、論文や統計データなどの一次情報も参照することが大切です。例えば、健康食品の効果を調べる際に、広告だけでなく、学術論文も読むことなどが挙げられます。まとめサイトやニュース記事、広告などは、誇張された表現や、事実に基づいていない情報も多いためです。但し、学術論文にもたくさんの種類があり、同じテーマを扱っていても異なる結論であることも多々あるため、幅広く論文に目を通すことが大切です。 ③統計的な思考を身に付ける 統計的な思考は、データの偏りやバイアスを見抜くために役立ちます。 ・統計学の基礎知識を学ぶ 統計学とは、データの収集、分析、解釈、提示を行うための学問であり、社会現象や自然現象を理解し、未来を予測するために欠かせない学問です。統計学の基礎を学ぶことで、データの解釈能力を高めることができます。 ・データの代表性に注意する データが、母集団を正しく代表しているかを確認しましょう。データが、特定の層に偏っていたり、調査方法が偏っていたり、標本サイズが小さい場合は、代表性が低い可能性があります。 ・相関関係と因果関係を区別する 相関関係とは、二つの変数が一緒に変化する関係のことであり、因果関係とは、一方の変数が もう一方の変数の原因となる関係のことです。相関関係があるからといって、必ずしも因果関係があるとは限りません。相関関係と因果関係を混同してしまうと、誤った解釈や結論を導く原因となりかねないため、両者を明確に区別するようにしましょう。 ④謙虚な姿勢を保つ 自分が全てを知っていると思い込まず、常に学ぶ姿勢を持つことが大切です。 ・反証可能性を意識する 自分の判断が誤っている可能性もあるという事を、意識することが大切です。 ・意見を変えることを恐れない 新しい情報や証拠があれば、自分の意見を変えることも厭わないようにしましょう。 生存バイアスは、無意識のうちに私たちの思考を歪めてしまうため、完全に防ぐことは難しいかもしれません。しかし、上記のような対策を意識することで、生存バイアスの影響を最小限に抑え、より正確な判断を下せるようになります。
当Webサイトでは、生存バイアスの他にも、様々な認知バイアスを解説しております。 その他の認知バイアスは、以下をご参照ください。 ・ハロー効果とは ・確証バイアスとは ・計画錯誤とは ・正常性バイアスとは ・バラ色の回顧とは ・透明性の錯覚とは ・アンカリング効果とは ・知識の呪いとは ・後知恵バイアスとは ・権威バイアスとは ・対応バイアスとは ・現在バイアスとは ・サンクコストバイアスとは ・行為者観察者バイアスとは