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目次
人には、自分が他者にどのように見られたいかを意識して、自己を表現することがあります。このような、自分にとって望ましい印象を相手に与えるために、自分の印象を操作する心理テクニックのことを、「自己呈示」と呼びます。 自己呈示は、日常生活において頻繁に行われています。例えば、初対面の人には良い印象を与えようと、いつもより丁寧に話したり、笑顔を絶やさなかったりするのは、自己呈示の一例です。また、就職活動やプレゼンテーションなど、特定の目的のために自己呈示を行うこともあります。 自己呈示には、以下のようなメリットがあります。 ・他者からの好感や信頼を得ることができる ・自分の目標を達成しやすくなる ・対人関係を良好に保つことができる 自己呈示を適度に使うことで、上記のようなメリットを享受することが出来ます。 一方、自己呈示には、以下のようなデメリットもあります。 ・自分を偽っているという罪悪感や不安感を抱くことがある ・相手から嘘つきだと思われる可能性がある ・自己呈示が過度になると、相手との信頼関係が損なわれる可能性がある 自己呈示では、自分を良く見せるために、偽りの自分を演じることがあります。その際に、自分を盛りすぎてしまうと、上記のようなデメリットに繋がります。過剰に演出した自分とふだんの姿が違うと、表裏のある人間だと思われる場合があるため、注意しましょう。また、場面や相手によって自己呈示の度合いが極端に違うと、悪い印象を持たれやすいため、場面や相手によって態度を変えないことが大切です。 なお、自己呈示は大きく分けて、「主張的自己呈示」と、「防衛的自己呈示」の二種類があります。「主張的自己呈示」とは、自分が他者にどのように見られたいかを意識して、自分を積極的にアピールする自己呈示です。一方、防衛的自己呈示とは、自分が他者にどのように見られたくないかを意識して、自分を控えめにアピールしたり、自分を守ったりするための自己呈示です。
「主張的自己呈示」とは、自分が他者にどのように見られたいかを意識して、自分を積極的にアピールする自己呈示です。以下の5種類に分類されます。 ①自己宣伝 ②威嚇 ③取り入り ④示範 ⑤愛玩 一つ目は、「自己宣伝」です。自己宣伝とは、「自分の能力やこれまでの誇らしい実績を示すことで、相手にとって価値のある存在だと思わせること」です。例えば、面接で自分のスキルや経験をアピールしたり、プレゼンテーションで自分のアイデアを自信を持って伝えたりするのは、自己宣伝の一種です。 二つ目は、「威嚇」です。威嚇とは、「自分が影響力がある人だと示すために、相手を脅すこと」です。例えば、喧嘩で相手を威嚇したり、仕事で部下にプレッシャーを与えたりするのは、威嚇の一種です。 三つ目は、「取り入り」です。取り入りとは、「自分が相手にとって役に立つことを訴えかけて、相手から良い評価を得ようとすること」です。例えば、初対面の人と会ったときに、相手の趣味や好みに合わせたり、相手の話をよく聞き、褒めたりして、好印象を与えようとするのは、取り入りの一種です。 四つ目は、「示範」です。示範とは、「自分が道徳心のある良い人物であることをアピールし、尊敬されようとすること」です。例えば、困っている人を見かけたら積極的に助けたり、不正や差別を目の当たりにした場合に、勇気を出して声を上げたりするのは、示範の一種です。 五つ目は、「哀願」です。哀願とは、「自分が弱いことをアピールして同情を誘い、助けや利益を得ること」です。例えば、困っているときに助けを求めたり、病気や不幸を嘆いたりするのは、哀願の一種です。 なお、管理人の立場としては、「威嚇」と「哀願」は、基本的に周囲に迷惑をかける行為であるため、オススメしません。「自己宣伝」「取り入り」「示範」については、適切に活用すると周囲の人の役に立つ行為であるため、主張的自己呈示を活用する際は、「自己宣伝」「取り入り」「示範」のいずれかを使ってみましょう。
「防衛的自己呈示」とは、自分が他者にどのように見られたくないかを意識して、自分を控えめにアピールしたり、自分を守ったりするための自己呈示です。以下の8種類に分類されます。 ①否定 ②正当化 ③弁解 ④謝罪 ⑤回避 ⑥棄権 ⑦セルフ・ハンディキャッピング ⑧社会志向的行動 一つ目は、「否定」です。否定とは、「自分の責任を認めず、自分の行為による被害も認めない」ことです。例えば、仕事で何かの失敗をしたときに、自分の責任ではないと主張したり、自分の行為が会社に被害を与えていることを否定したりすることが挙げられます。人は窮地に陥ると、まず第一に考えるのは保身です。そのため、とっさに否定が出てしまうこともあるかと思いますが、嘘がばれた場合はさらに厳しい批判を受けるため、否定による自己呈示は得策ではありません。 二つ目は、「正当化」です。正当化とは、「自分の責任は認めるが、自分の行為による被害を認めない」ことです。例えば、仕事で何かの失敗をした時に、自分の責任を認めつつも、自分の行為は正当だったという言い訳を並べたり、被害は大したことじゃないと述べたりすることが挙げられます。自分の責任は認めつつも、「提出期限は確かに遅れたが、提出自体はちゃんとしたので、誰にも迷惑をかけていない」などと言い訳をするのは、正当化の一種です。 三つ目は、「弁解」です。弁解とは、「自分の責任は認めないが、自分の行為による被害を認める」ことです。例えば、仕事で何かの失敗をした時に、自分の行為が会社に迷惑をかけたことを認めつつも、自分には非がないと主張することが挙げられます。自分の行為による被害を認めつつも、「忙しくて、十分に確認する時間が無かった」「上司からの指示が分かり辛かった」などと言い訳をするのは、弁解の一種です。 四つ目は、「謝罪」です。謝罪とは、「自分の責任を認めて、自分の行為による被害も認める」ことです。例えば、仕事で何かの失敗をした時に、自分の非を認めた上で、会社に迷惑をかけたことも認め、謝罪することが挙げられます。「提出期限が遅れたのは私の責任で、そのことにより会社に迷惑をかけ、申し訳ありませんでした。」と謝罪するのは、謝罪の一種です。 なお、上記の「否定」「正当化」「弁解」「謝罪」の四つについては、自分の責任の所在と自分の行為による被害を認めるか認めないかの違いなので、セットで覚えましょう。 上記の四つの中で、相手の怒りを和らげて、相手との関係を改善するのに最も効果的なのは「謝罪」です。次いで、「弁解」⇒「正当化」⇒「否定」の順になります。まずは行為による被害を認めるかどうかで、大きく印象が異なるためです。 五つ目は、「回避」です。回避とは、「下手な言い訳をしないために使われる時間稼ぎ」のことです。例えば、「時期が来たら、全てを話します」「その件に関しては、現在事実確認をしている最中のため、お答えできません」と答えたり、仮病を使って会社をしばらく休んだりすることが挙げられます。単に時間を稼いでいるだけなので、「回避」は解決策にはなりません。 六つ目は、「棄権」です。棄権とは、「自分の言動に対する責任を持ちたくない時に使われる、責任逃れの前置き」のことです。例えば、人に何かをアドバイスする際に「専門家ではないので責任は持てませんが…」であったり、「あくまでも聞いた話だけど…」などの前置きを使うことや、いろいろ説明した後に、「あくまでも自己責任でお願いします」と一文を付与したりするのは、棄権の一種です。後々に自分に責任が及ばないための予防策ですが、多用すると信頼感を損ねることに繋がります。 七つ目は、「セルフ・ハンディキャッピング」です。セルフ・ハンディキャッピングとは、「自分自身にハンデを課すことで、失敗したときに言い訳を用意しておく」というものです。また、成功したときには、ハンデがあったにも関わらず成功したと、自分が高い能力を持っていることを主張することも出来ます。 例えば、試験前にわざと勉強しないことにより、「勉強していなかったから仕方ない」という言い訳を用意することがあります。また、プレゼンテーション前にわざと準備不足にすることにより、「準備不足だったから仕方ない」という言い訳を用意することがあります。また、重要な仕事の前にわざと睡眠時間を短くして、「寝不足だったから仕方ない」という言い訳をすることがあります。 セルフ・ハンディキャッピングは、軽度に使う程度であれば自己肯定感を守るために有用に働く場合もありますが、多用する癖がつくと怠け癖がついたり、言い訳がましく聞こえて周囲からの印象を悪くするため、多用しすぎないように注意しましょう。 八つ目は、「社会志向的行動」です。社会志向的行動とは、「自分の否定的な行動が偶然だと相手に思わせるために、わざと社会的に望ましい振る舞いを見せようとする行為」のことです。例えば、鼻をほじっているところを他者に見られた時に、とっさに鼻をほじっているのではなく掻いているように見せたり、仕事中に居眠りをしているところを他者に見られた時に、とっさに何か閃いたかのようなポーズをして、アイデアを考えていたのかのように見せる行為などが挙げられます。
防衛的自己呈示について見てきました。①~④の、「否定」「正当化」「弁解」「謝罪」において、「謝罪」が相手との関係を改善するのに最も効果的なのは明白なのに、なぜ人間は、「否定」や「正当化」「弁解」をしてしまうのでしょうか。それには、「認知的不協和」という心理傾向が、密接に関係しています。 「認知的不協和」とは、自己の認知が矛盾しているときに不快感やストレスを感じる心理傾向のことです。その際に、不快感やストレスを軽減するため、自己の認知を変化させて矛盾を解消しようとする特徴があります。例えば、本来の自分は優秀な人間で、仕事をきっちりとこなせるはずだというイメージを持っている人がいるとします。その人が、自己の責任により仕事で失敗をしてしまい、職場に迷惑をかけたとします。その場合、自己の矛盾する認知に不快感を感じ、その不快感を軽減するために、自分の責任を認めなかったり、自分の行為による被害を認めないように認知を変化させることがしばしばあります。仕事の例を挙げましたが、それ以外にも、認知的不協和に陥った場合の例を挙げます。認知的不協和に陥ると、運転にもの凄く自信を持っている人が交通事故を起こした時に、言い訳を並べることがあります。他人に悪口を言ってしまったことを、お酒のせいにすることがあります。友達との約束に遅刻したのを、配偶者のせいにすることがあります。これらは、全て認知的不協和による防衛的自己呈示が働いた例と言えます。 「否定」「正当化」「弁解」の他にも、「回避」「セルフ・ハンディキャッピング」「社会志向的行動」も、認知的不協和による不快感を解消するための行動だといえます。 このように、「防衛的自己呈示」と「認知的不協和」は、密接に関係しているということを、頭に入れておきましょう。
コントは、以下をご参照ください。 ・自己呈示とは ・主張的自己呈示について ・防衛的自己呈示について① ・防衛的自己呈示について② ・防衛的自己呈示と認知的不協和の関係性について